誕生石はジュエリーやアクセサリーに使われている宝石の中でも昨今特に人気です。ショッピングモールなどでも誕生石を使ったジュエリーがディスプレイされていたりするので、ご自身の誕生月の宝石を覚えている方も多いのではないでしょうか。
「貴方の誕生月の石は〇〇ですよ!」と言われて「そうなんだ覚えておこうかな」とはなりますが「なぜそう決まっているのか?」や「誕生石だからどんな意味があるのか?」など、疑問に思われていることも多いと思いますので、詳しく解説させて頂きます。
誕生石って何?
誕生石とは月の満ち欠けによって日を測り、1年を12カ月とした時に各月にちなんだ守護石となる宝石のことです。
なぜ各月に宝石が割り振られ、守護石とされているのでしょうか?どのような歴史の背景の中で定められたのでしょうか?もう少し深く追っていくためにはジュエリーの故郷であるヨーロッパの歴史と文化を見てみましょう。
誕生石の起源
誕生石がどのようにして定められてきたのかを紐解くには「太陽暦」「ローマ神話」「宝石」という3つのワードが鍵になります。
太陽暦とローマ神話
古代ヨーロッパでは月の満ち欠けを基準に年、そして月を測り決めていました。こうして決められた暦 (こよみ) を太陽暦の中でユリウス暦といいます。ユリウス暦は4世紀頃に開発されて使われていたというので驚きです。
ユリウス暦の1月から6月の月名にはローマ神話の神様の名前が当てられています。神の存在がヨーロッパの人々にとって身近だったことが分かりますね。実際に「月神 (lunar deity)」という言葉があり、12か月それぞれの月の神を祀る儀式が行われていた様です。
現在では、ユリウス暦をより正確に進化させたグレゴリオ暦という太陽暦が使われ、日本でも明治時代から採用されています。
ローマ神話と宝石
ローマ神話の中で宝石は話の布石となるキーアイテムとして、そして時には神の化身として登場します。今日でも同じですが、古代ローマの人々にとっても宝石は不思議な力を持つ希少で魅力的な存在であるとされていたのでしょう。
そのため宝石は儀式の際に神にささげるものとして頻繁に使われました。また、宝石そのものを神の化身ととらえ、神にまつわる宝石を身につけることで、つけた者は欲する力を得ることができると考えられていました。
これらのことから 誕生石は月神にささげる宝石 = 月神の力を得ることができる宝石 としてヨーロッパ圏の文化に根付き、世界に拡散していったのだと考えることができます。
旧約聖書と誕生石
また、誕生石の由来は旧約聖書の出エジプト記に記されている「裁きの胸当て」という衣装が起源となっているという説もあります。出エジプト記はエジプトで虐げられたユダヤ人が聖人モーセの予言を得てエジプトを脱出するという物語です。
この中で神はモーセに「私に仕える人を用意し、彼らに 聖なる衣服 = 裁きの胸当て を与えなさい」と指示します。この裁きの胸当てには横3列・縦4列の宝石が留められます。使われた宝石は諸説あるのですが、以下の様になっています。

[Public domain], via Wikimedia Commons
[CC BY 2.5], via Wikimedia Commons
横の1列目 | 横の2列目 | 横の3列目 | |
---|---|---|---|
縦の1列目 | エメラルド | トパーズ | ルビー |
縦の2列目 | ターコイズ | サファイヤ | ガーネット |
縦の3列目 | アメジスト | アゲート | オパール |
縦の4列目 | ジャスパー | ラピスラズリ | アクアマリン |
現在の誕生石とは違いますが旧約聖書が書かれたのは2世紀頃ですから、掘削、研磨技術の発達と共にこれらの宝石が置き換えられて現在の誕生石となっていった可能性もありますね。
「どちらの説が有力か?」というよりは、これらの説がヨーロッパ圏の文化の中で混ざり合い、熟成されて現在の誕生石になっているのでしょう。いずれにせよ誕生石には自己実現を果たすために神の力を借りて努力していこうという想いが込められているのです。
誕生石の種類
現在誕生石として定められている宝石は以下の通りです。誕生月をタップすると月ごとに誕生石の鉱物的な内容や伝説、意味などについて詳しく解説していますので、ご自身の誕生石を確認してみて下さいね。
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- 1月の誕生石
- ガーネット
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- 2月の誕生石
- アメジスト
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- 3月の誕生石
- アクアマリン
- サンゴ
- ブラッドストーン
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- 4月の誕生石
- ダイヤモンド
- クォーツ
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- 5月の誕生石
- エメラルド
- ヒスイ
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- 6月の誕生石
- 真珠
- ムーンストーン
- アレキサンドライト
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- 7月の誕生石
- ルビー
- カーネリアン
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- 8月の誕生石
- ペリドット
- サードオニキス
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- 9月の誕生石
- サファイヤ
- アイオライト
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- 10月の誕生石
- トルマリン
- オパール
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- 11月の誕生石
- トパーズ
- シトリン
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- 12月の誕生石
- タンザナイト
- ターコイズ
- ラピスラズリ
誕生石はなんでいくつも種類があるの?
なぜ誕生石はひと月に数種類の宝石が定められていることがあるのでしょうか?それは地域によって産出される鉱物が違うことや、その地域で生まれた物語や伝説と結びつけらた宝石の種類の違いに起因します。
ヨーロッパ圏だけでなく、現在でもイスラエルを中心とした中東、インドを中心とした中央アジア、中国を中心とした東アジア地域でも神様や見えない力と宝石の結びつきは強く、占星術によってお守りとして宝石を選ぶことも頻繁に行われています。
まとめると、誕生石に数種の宝石がある理由は、地域によって産出される鉱物の違い → 使われる宝石の文化の違い → 誕生石に対応する月神や伝説の違い といったことがあるからです。
誕生石の信憑性は?
「誕生石って効果があるの?」「本当に歴史的な裏付けがあるものなの?」とお考えの方もいらしゃると思います。誕生石に定められるきっかけとなった宝石の文献は、各地域の古語で書かれているものも多く、意訳された宝石を当てはめている場合もあります。
- トパーズ
- 語源は「探し求める」を意味するトパゾス (topazos) という説がある。
- ペリドットもかつてはトパゾスと呼ばれていた。
この様に、当時では同じ鉱物とされていた宝石が紆余曲折の中で分かれたり、同じ宝石とされていた鉱物が科学の発達によって別々の鉱物だと判明したり、現在の誕生石では別の宝石に置き換えられているといった場合があります。
そのため、厳密に言えば古代の誕生石と現在では異なることがあるのですが、これは科学の発達により古語の意訳により近い宝石が選ばれているとも言えます。そのため、誕生石の力を信じるという意味では現代の方が神話上の宝石に近いと言えますね。
誕生石を自分で買う意味とプレゼントする意味
誕生石が具体的に「○○に効きます!」といった論証は現代の科学の中では証明されていません。しかし、誕生石には「宝石自体に力があるか?」ということより重要な役割があります。それは、自分を信じることができたり、人に想いを伝えることができる点です。
「自分を守ってくれるお守りが欲しい」「目の前にある高い壁を乗り越えたい」という時には、ご自身の月の誕生石を身につけることで、きっと「私なら大丈夫」と思えるようになるでしょう。新年度などの新たなスタートのタイミングにも良いですね。
また、大切な人に「あなたのことを想っているよ」「いつも傍で応援しているよ」という気持ちを伝えたい時にも誕生石はピッタリです。いつも身につけることができて、劣化しにくく、守られている安心感を感じることができるアイテムは他にはありません。
まとめ
今回は誕生石と呼ばれている宝石の「なに?」「なぜ?」「本当?」について細かく解説させて頂きました。
現在解明されている化学の視点から見ると「それって効果があるの?」となってしまいがちですが、その誕生石を手に入れた方の自分を信じる心や、大切なから見守られているという安心感はご本人にとって大きな力になっていると思います。
その上で数万年、数千年前に生まれた石の力に想いを馳せ、石の力を信じることにはとてもロマンがありますよね。私自身、そういった想いで誕生石のジュエリーをデザインして、身に着けています。
こちらの記事があなたの誕生石へのご興味に繋がったり、お持ちの誕生石アイテムを大切につけるきっかけになったら嬉しいです。