一言に真珠と言っても天然のものから人工的に作り出したものまで様々な種類があります。今回は真珠にはどんな種類があるのか?どんな歴史があるのか?種類による真珠の価値は?と言ったことにスポットライトを当ててご紹介していきます。
真珠にまつわる伝説や神話、宝石言葉については6月の誕生石をプレゼントしたい人必見!宝石言葉・神話・伝説まとめにてご紹介しておりますので、気になる方は併せてご覧になってみて下さい。
また、真珠の選び方や装い方については「普段用から冠婚葬祭まで!真珠の選び方と装い方・種類による使い分け」を、お手入れ方法やお修理については真珠ネックレス修理とお手入れの仕方、切れてしまった時の対処方法をご覧頂けましたら幸いです。
真珠 (パール) ってどんな宝石?
本来の意味での真珠とは様々な貝の内側から取れる珠状や不定形の形をした産出物を指します。貝の中に砂などの異物が入ると、貝は身を守るために分泌液を出して不純物を包み身を守ります。その分泌液が何層にも取り巻かれたものが真珠になります。
養殖環境では、別の貝殻を丸く研磨した玉を貝の中に挿入します。丸い不純物を貝の中に入れることで、真円に近い真珠ができやすくなるという仕組みです。現在では、流通しているほとんどの真珠が養殖環境下で管理、採取されています。
これら本真珠に対し、最近では人工物も「○○真珠」や「○○パール」と呼ばれている様ですので、成り立ちと真珠の定義を整理しました。
- 人工真珠 (模造真珠)
- プラスチックなどの人工球体に塗装を施したものや、綿を圧縮して球状に整えた真珠の模造品
- 本真珠
- 海水・湖水の自然環境下または養殖環境下で育成された貝から取り出される、球状や不定形の真珠光沢を持った宝石
注意したい点は真珠の種類に関わらず全ての自然環境下・養殖環境下で採れた真珠が本真珠と呼ばれて流通しているところです。
場合によっては天然真珠と表記されていることもあります。本真珠や天然真珠と聞くとそれだけで価値の高い宝石の様に感じますが、貝の種類や品質によって、その価値は大きく変わります。そのため、本真珠というだけで価格の高い・安いを判断してしまうのは危険です。
真珠 (パール) の歴史
真珠と人類の歴史は古く、紀元前3200年頃には食用に採った貝の中から偶然に見つけたことが始まりと考えられ、その美しさから貴重な宝石として愛されていた様です。初めて真珠を目にした人はびっくりしたでしょうね。
紀元前1500年から紀元後頃になると、真珠について明確に記した文献が古代ギリシア、古代ローマ、ペルシア、インドなどで発見されています。日本でも魏志倭人伝に、邪馬台国の卑弥呼の娘が魏の王に白珠5000孔 (真珠5000個) を献上したと書かれています。
「一国としての贈り物が真珠5000粒だけ?」と感じるかもしれませんが、それは現代人の感性です。私達が身に着けている真珠の99%は養殖真珠です。当時は養殖技術などありませんでしたから、途方もない数の貝からやっと見つけた一粒一粒を集めていました。
それだけに日本では七宝のひとつとして数えられていますし、世界中の国々で真珠は最も貴重な宝石であるという逸話が残されています。事実、カルティエもアメリカのニューヨーク支店は土地建物を真珠のネックレスと交換で手に入れています。
カルティエが真珠のネックレスと建物を交換したのが1917年ですから、近代になるまで真珠は本当に貴重な宝石でした。長い歴史を破り、真珠の養殖に成功した偉人がミキモトの始祖、御木本幸吉です。エジソンに並ぶ功績として評価されていますね。
こうして1930年頃から徐々に世界のジュエリー市場で養殖真珠のウェイトが大きくなり、現代に至っています。現在、国内外を問わず多くの人々が真珠を身に着けることができるのは、御木本幸吉のおかげと言っても過言ではないのです。
真珠 (パール) の主な種類と特徴
真珠を作る貝の種類によって、本真珠の種類が変わります。例外的に人工真珠についても解説しました。
養殖真珠
完全な自然状態ではなく、貝の養殖環境を整えて育てられた真珠を養殖真珠といいます。
淡水真珠
- 希少性
- ★★☆☆☆
- 一般的な珠の大きさ
- 1mmから20mm位
イケチョウガイ (池蝶貝) から採れるため池蝶真珠と呼ばれることもあります。一般的にアコヤ真珠、白蝶真珠、黒蝶真珠に比べると安価ですが、サイズや独特の光沢を放つものは高額になることもあります。淡水真珠のほとんどが中国で養殖されています。
アコヤ真珠
- 希少性
- ★★★☆☆
- 一般的な珠の大きさ
- 1mmから10mm位
アコヤガイ (阿古屋貝) から採れる真珠です。日本人の多くの方が一般的に「真珠」と言った時に思い浮かべる、白色の真珠がアコヤ真珠です。日本の他、中国などで養殖され、流通しています。
白蝶真珠
- 希少性
- ★★★☆☆
- 一般的な珠の大きさ
- 8mmから16mm位
シロチョウガイ (白蝶貝) という殻長20cm程の大きな貝から採れる真珠を白蝶真珠と言います。白色の他に金色の珠も採取され、美しい金色はゴールドリップという名で高額取引されます。オーストラリア、フィリピン、インドネシアなどで養殖されています。
黒蝶真珠
- 希少性
- ★★★☆☆
- 一般的な珠の大きさ
- 8mmから14mm位
クロチョウガイ (黒蝶貝) という殻長14cm程の貝から採れる真珠を黒蝶真珠といいます。グレーから黒色の珠が採れ、特に黒色の地に緑色の光沢を持つ黒蝶真珠はピーコックグリーンと呼ばれ、最高色とされています。黒蝶真珠の90%がタヒチで養殖されています。
マベ真珠
- 希少性
- ★★★☆☆
- 一般的な珠の大きさ
- 10mmから20mm位
マベ貝という25cm位の大柄な貝から採れる半球形の真珠をマベ真珠と言います。本来、マベ貝から採れた真珠だけがマベ真珠なのですが、現在では半球形の形のものを総称してマベ真珠と呼ぶこともあります。購入される際にはお店に確認しましょう。
天然真珠
完全な自然環境下で育った真珠を天然真珠と言い、大きさや形は多種多様です。主に食用貝から採取されることが多いです。
アワビ真珠 (アバロンパール)
- 希少性
- ★★★★☆
お寿司のネタにもなっているアワビ (鮑) から採れる真珠で、コレクターストーンとして流通しています。アワビの中でもアメリカ西海岸に生息するクジャクアワビの内側はとても美しく、このアワビ真珠はオパールにも似た七色の光沢を持っています。
コンクパール
- 希少性
- ★★★★★
カリブ海に生息するピンク貝から採れる真珠をコンクパールと呼びます。真珠を生成するのは主に二枚貝ですが、ピンク貝は巻貝です。コンクパールは養殖が難しく、全て天然の真珠のため、カラット法 (重量) で取引されており非常に高価です。
オイスターパール
- 希少性
- ★★★★★
冬のお鍋でなじみ深いカキ (牡蠣) から採れる真珠です。食用の牡蠣からごく稀に採れる天然真珠のため、不定形で一般的なジュエリー用としてではなく、コレクターストーンとして流通しています。主に中南米で採取され取引されています。
人工真珠
一般的な真珠に似せて人の手で作られた真珠です。イミテーションパールやフェイクパールと呼ばれています。
コーティングパール
プラスチックなどの素材に真珠色のラッカーを吹き付けて作る場合や、不透明ガラスに真珠素材の顔料を塗装して作られます。スペインではマヨルカ島の伝統工芸品として、マジョリカパール (マヨルカパール) という名称で世界に発信されています。
貝パール
貝殻 (母貝といいます) の部分をカットして玉状に加工したものに真珠色のコーティングを施したものを貝パールと呼びます。イミテーションパールとしては最も歴史が深く、ファッションブランドでは1900年代初頭から用いられていた様です。
コットンパール
綿を圧縮して球体に整え、表面に真珠光沢のある塗装を施したものがコットンパールです。近年になって流通量が多くなりました。マットな風合いの独特の質感が人気を呼び、服飾ブランドのアクセサリーやハンドメイドアクセサリーに多用されています。
まとめ
貝にとって真珠は、外から入ってきた異物から身を守るために出来たものですが、それが、人にとって貴重な宝石になるとは不思議ですよね。そして、建物1棟と真珠が同等の価値を持っていた時代があったことにも驚きます。本当に養殖技術が発達して良かったですよね。
様々な真珠の種類をご紹介しましたが、真珠ができる仕組みは多くの貝が持っている性質なので、普段お味噌汁にして食べているアサリの中にも入っているかもしれません。そう考えると毎日の夕飯の準備も少し楽しみになります。
昨今では、安価な真珠を値打ちのある商品に見せかけるためにワザと紛らわしい表記をしている宣伝も見かけるようになりました。「これは安い!」と飛びつく前にお読み頂いた内容を思い出して、あなたのお眼鏡に叶う真珠を見つけて下さいね!