アンティークジュエリーってどんな宝石?分かりやすく解説します!

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ジュエリーショップで指輪やネックレスを眺めていると、店員さんから「アンティークテイストで今とても人気のシリーズですよ!」と勧められたり、ご友人から「アンティークデザインが好きなんだね!」なんて言われたご経験はありませんか?

このアンティークジュエリーという言葉。あちこちで使われていますが、「なんとなくイメージがつくよう様なつかない様な・・・」、一体どの様なジュエリーがアンティークジュエリーなのでしょうか?分かりやすく解説していきます。

こちらは2017年10月の記事ですが、お伝えしきれていない部分も多々ございましたので、大幅に改訂致しました。

 


アンティークジュエリーを一言で表すと?

アンティークジュエリーとは、100年以上時間の経った装飾品全般を指します。

現在を2020年位とすると、1900年代初頭以前の世界中で作られたアクセサリー・ジュエリーは、全てこの条件に入ってきます。ジュエリーやアクセサリーの起源は紀元前にまで遡りますので、アンティークジュエリーと呼ばれるジュエリーの範囲はとても広いです。

逆に100年経っていないジュエリーは、エステートジュエリーと呼ばれます。アンティークジュエリーの魅力は歴史的な背景と当時の素材や技巧にあります。そのため現代の製作方法に近い手法のエステートジュエリーは、アンティークジュエリーとは区別されます。

 

アンティークジュエリーが人気のワケは?

なぜアンティークジュエリーは現在でも模倣されるほど人気があるのでしょうか?このことを解き明かす鍵は、様々な時代でのジュエリーの役割にあります。先ずは、紀元前から多様化してきたジュエリーの役割について、歴史を早送りで見ていきましょう。

歴史の中で多様化したジュエリーの役割

ジュエリーやアクセサリーの起源は紀元前にまで遡ります。当時は動物の骨を削って身に着けると、その動物の力が宿ったり、穢れを払う石を磨いて身につけると、病気が治ると信じられていました。現代の宗教と科学の役割をジュエリーが担っていました。

その後、人が集団生活を送るにあたって、徐々に【国】の原型が生まれ始めます。統治者は、その土地の【王】であることを示すために、希少な石や金属を使ったジュエリーを作らせて身に着けるようになります。

国が完成すると土地それぞれの風土に合った文化が育っていきます。同時に争い事も起こる様になりました。ジュエリーは身分や豊かさの象徴であったため、美しさを競うことで相手をけん制する道具として、また奪うことで権力交代の証明になりました。

やがて、18世紀中頃から起こった産業革命により量産が可能になると、ジュエリーは権力を誇示する男性用の道具としてだけではなく、芸術やファッションの文化と融合して女性用としても広がっていきました。そして今日の形に至っています。

アンティークジュエリーは人を飾る道具として・身分を表す道具として・そして国力を示す道具として使われたので、各時代の中で最高の宝石・デザイン・技巧を凝らした至高品でした。だからこそ、現在でもその価値を見出されているのです。

 

代表的なアンティークジュエリーは2種類

アンティークジュエリーとは、100年以上時間の経った装飾品全般とお話しましたが、一般的にアンティークジュエリーは2つに分類されます。ひとつはイギリスを中心としたヨーロッパ全体 (特にイギリス・フランス・ドイツ・トルコなど) のジュエリー。

もう一つはアメリカで作られていた、よりカジュアルなアクセサリーです。アメリカのアクセサリーについては、アンティークジュエリーとは別にヴィンテージアクセサリーという名前で呼ばれたりしています。

ヨーロッパアンティーク

ヨーロッパは1900年代まで王制や貴族文化、宗教や思想などが最も発達した地域でした。芸術や工芸においても最も優れた美しい作品が集まっていることから、一般的にアンティークジュエリーとはヨーロッパ各国で作られたジュエリーを指します。

アメリカアンティーク

1900年代以降になると、ファッション (服飾) の流行、産業の機械化によりドイツやアメリカにデザインの中心が移っていきました。素材もプラスチックや樹脂などの新素材が使われた今で言うアクセサリーのジャンルが確立していきました。

この時代にアメリカで樹脂やガラスで作られたアクセサリーがアメリカンアンティークジュエリー、又はアメリカンヴィンテージアクセサリーと呼ばれます。現代と中世の狭間の近代アートとして楽しまれるジャンルになっています。

今回は主線のヨーロッパアンティークジュエリーについてお話を進めます。アメリカンアンティークジュエリーにご興味のある方は、アンティークミュージアムの記事をご覧下さい。

 

その他の国々にはアンティークジュエリーは無いの?

統治者が生まれ、文化が醸成されていくと自ずとジュエリーが必要とされるので、あらゆる国でアンティークは存在すると考えられます。以前に、イスラエルで2000年前のイヤリングが出土したというニュースが報道されていました。

しかし先進国でなければ、なかなか当時に関する研究が進まず、情報や品物が流通しないため、少数の方のみが知るアンティークジュエリーの方が圧倒的に多いのではないかと推察されます。今後の経済発展次第では新たな発見があるかもしれません。楽しみですね!

その他の国のアンティークジュエリー

ヨーロッパやアメリカ以外でもアンティークジュエリーは知られています。例えば、インド等の中央アジア地域では古くから王制が発達しており宝石素材も多く出土していたので、王族はとても豪華なジュエリーを纏っていました。

煌びやかな宝石を純度の高い黄金で包み、七宝で細工を施した存在感のあるジュエリーはマハラジャジュエリーと呼ばれています。日本でも2016年にムガール皇帝とマハラジャの宝石と題した作品展が、滋賀県のMIHO MUSEUMで開催されていました。

イギリスに回収されたジュエリー

17世紀初頭、イギリスはエリザベス1世の許可を得て有名な東インド会社を設立しました。東インド会社は表向き世界との貿易を行う会社でしたが、その実、交易条件や武力行使等、あらゆる手段で他国を侵略していきました。

そして次々と世界中の国々を植民地化していく過程で、元の国の文化財は大英博物館に納められました。こうして大英博物館では現在でも、ジュエリーを含む世界中の歴史ある調度品を見学することができるようになったのです。

 


ヨーロッパアンティークジュエリーの歴史

それでは、本題のヨーロッパアンティークジュエリーの歴史を見ていきましょう。

ヨーロッパアンティークジュエリーの中心は、1800年頃から1900年代初頭の約100年間に作られたジュエリーです。1760年代から産業革命に成功したイギリス国王や貴族たちは、巨万の富を得ていました。

あくせく働く必要のなくなった貴族達は、仕事を全て部下に任せてイベント・観光・芸術・恋愛などに勤しみ、プライベートを充実させることに熱心になっていきます。出張の折に恋人へのお土産として、好きな人を振り向かせるための愛の表現として

貴族の男性達はこぞって大金を払い、職人達にジュエリーを作らせました。職人達もそれに応えるように技術を向上させていきました。注文から受け取りまで1年以上もかけて制作することも珍しくなかったようです。

職人の生活費の1年分以上を含む制作費を負担するのですから、驚きの金額になりました。このようなイギリスが一番の栄華を誇った時代を、ビクトリアン時代 (1837年~1901年) と言います。そして貴族達の芸術への関心は、文化運動へと発展していきます。

こうして起こったのがアールヌーボー (1800年代後半~1900年代初頭) です。アールヌーボーは産業革命がもたらした工業化によって、自然界の美しさや人の技術が疎んじられてしまうことを否定した、芸術運動アーツアンドクラフツに端を発します。

昆虫・花・女性をモチーフとした自然で曲線的な構図が特徴です。工業化に危機感を持った職人達による、機械には作ることができない手作りだからこその芸術を存分に示した、最高峰のジュエリーが多く誕生しました。

やがてアールヌーボーは徐々に収束し、新しい文化運動アールデコ (1910年頃~1930年頃) が流行り始めます。この頃には工業化も進み、プラスチックが開発されました。アールデコはアールヌーボーとは対照的に、直線的、幾何学的な構図が特徴です。

ヨーロッパだけでなくアメリカ (ニューヨーク)も、デザインの発信源になっていきました。こうして生まれたジュエリーがアメリカンアンティークジュエリーです。工業による量産が可能になった恩恵により、初めて大衆向けのアクセサリーが作られた時代でした。

 

現代のジュエリーとの感性の違い

1900年代初頭までのヨーロッパジュエリーの特徴を、文化的な背景や人にスポットライトを当ててまとめてみました。

身分
王族・貴族又は貴族の関係者の男女。大変高価な贅沢品であった。
制作期間
半年~数年かけて職人に作らせる。
素材
宝石・新素材・貴金属。金がとても貴重だったため、純度についてはあまり問わなかった。
文化
正式には指輪・ネックレス・ティアラ・イヤリングを含むセット (パリュール) で身に着けた。
価値観
貴族にとっては生活に無くてはならないモノ。庶民にとっては目に触れる機会も無いモノ。

この様に多くの人々にとってジュエリーは、全く手の届かない存在でした。現在の私達にとっても特別な存在ではあるものの、好きなジュエリーやアクセサリーを選んで買ったり、オーダーしたりできることは幸せですね。

 


アンティークジュエリーの魅力

主にヨーロッパアンティークジュエリーについて解説してきましたが、インターネットで好みのアンティークジュエリーを探したり、実物のアンティークジュエリーをご覧になる機会がありましたら、こんなポイントを意識して見てみると、より楽しめます。

歴史的な魅力

アンティークジュエリーを観覧する時には時代背景を知っておくと、品物の美しさ以上の感慨を感じることができます。作られた時代の背景・身に着けていた人・当時の文化や生活に想いを馳せると、現代とは違ったゆったりとした時間の流れを感じます。

貴族の女性は自宅で開くお茶会等が仕事で、お洋服も執事に着せてもらっていました。男性も君主への謁見が仕事で、その日以外は仲間と旅行に行っていたようです。彼らの心と時間にゆとりがあったからこそ、当時の芸術が深まっていったのですね。

デザイン的な魅力

100年以上を経た今もなお、模倣され続けている18世紀から19世紀のデザインは、考えに考え抜かれて生み出されたものです。この頃には、ジュエリーデザイナーという職種はほとんどありませんでした。クライアントの要望に職人がアイディアを練り、

長時間かけて一つの作品を作っていったのです。そのため作品にはデザインの美しさの裏に、贈る相手へ想いを伝える意味や、モチーフに特別な意味がありました。デザインの傾向から制作年代や、制作された地域を推測するのも興味深いですね。

技術的な魅力

アンティークジュエリーの中には、現代に至るまでに途絶えてしまった技術を使って作られた作品がいくつもあります。べっ甲と金を材料とし、象嵌製法が用いられたピクエや、制作工程に劇薬を使用するために作られなくなったサフィレットが、これに当たります。

当時のヨーロッパでは、ギルドと呼ばれる職能組織により徒弟制度がしっかりしていました。また与えられた制作期間が長かったからこそ実現できた発想と技術を堪能できます。「これってどうやって作ったの!?」と不思議に思うような作品に出会えるでしょう。

 

まとめ

以上、「今日はコレをやらなきゃ!明日はあれも・・・」と、時間の流れがとても速い現代とは違った、優雅でゆったりとした世界のお話でした。余りピンと来ないかもしれませんね。しかし私達も、たまにはゆっくり自分時間を作ることも大切です。

丸一日空けてカフェでお茶を飲んでから美術館へ、アンティークジュエリーを眺めたらディナーでお友達と品評会。など良いですね!目の前にあるモノ以上に、背景の広がりを想像して味わえる楽しみがアンティークジュエリーの一番の魅力です。

調べてみると、意外と多くの美術館でアンティークジュエリー展を開催しているいました。是非一度は実物をご覧になってみて下さい。また、東京都の祐天寺駅近くにあるアクセサリーミュージアムには、アンティークジュエリーが常設されています。

ジュエリー優でも、ご興味を持った方がアンティークの魅力を身近に体験できる場をご提供したいと思い、年に一度10月にアンティークジュエリー展を行っています。 (2019年も10月を予定しています。ご連絡頂けましたら詳細が決定次第情報をお送りします。)

ご覧になって頂いたお客様の「アンティークテイストってどういうこと?アンティークジュエリーって何?」という疑問が解決して、ジュエリーを楽しめるジャンルが広がり、そして心の癒しの時間が増えていって下さったら嬉しいです!

 

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