お気に入りの指輪が年月と共に入らなくなってしまったり、体形の変化によって緩くなってしまうことがありますね。また、インターネットで指輪を購入したものの、届いたらサイズが思った通りではなかったという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そういった場合には、指輪のサイズを広げたり、縮めたりするサイズ直しが必要になるのですが、指輪にはサイズ直しできるものとできないものがあります。今回はサイズ直しができる指輪・できない指輪について具体的にお話していきます。
「ジュエリーショップに加工ができないと言われてしまった」という時の対処方法についても、合わせてご紹介いたします。
指輪のサイズ直しの方法
指輪のサイズ直しの可否は、指輪の素材やデザインと、サイズ直し加工の相性によって決まります。ここでは、サイズ直しの可否についての具体的なお話に触れる前に、サイズ直し加工の一般的な方法についてお話させて頂きます。
サイズアップする場合
指輪をサイズアップする場合には、指輪のデザインに影響しない底面部分を、糸ノコギリ等でカットして指輪全体を広げ、本体と同素材の金属パーツを挿入して2点を溶接します。溶接後に本体とパーツを擦り合わせて加工箇所を整えます。
サイズダウンする場合
指輪をサイズダウンする場合には、指輪のデザインに影響しない底面2箇所を、糸ノコギリ等でカットして指輪の一部分を取り除き、切断した両端を合わせて溶接します。溶接後に加工箇所を整えます。
サイズアップ、サイズダウン共に、溶接後に指輪を真円に整えて溶接個所を磨き直します。一般的にはガスバーナーの火を指輪本体に当てて溶接しますが、現在ではレーザー光線を使って溶接個所のみを局所的に加熱して溶接する方法も行われています。
この指輪はサイズ直しできる?サイズ直しが可能な条件
サイズ直し加工の可否は、先述の通り指輪の素材やデザインと、指輪に火やレーザー光線を当てる際の耐熱性、指輪の溶接時の曲げる箇所への影響といった加工面の相性によって決まります。それでは、素材とデザインに分けて見ていきましょう。
素材による可否
金属素材が原因で指輪のサイズ直し加工ができない場合、耐熱性に問題があるケースが多いです。その他の原因では、通常の条件下では溶接ができない場合や、指輪の製造時に特殊な金属が混ざっているケースなどがあります。
- ○サイズ直しができる主な素材
- プラチナ950
- プラチナ900
- プラチナ850
- 22金
- 18金
- 14金
- 10金
- シルバー950
- シルバー925
- △サイズ直しが難しい主な素材
- プラチナ1000
- クレイシルバー
- 真鍮
- 銅
- ステンレス
- ×サイズ直しができない主な素材
- チタン
- タンタル
- アルミ
- 鉄
- スズ合金
- ニッケル合金
- 象牙
- ヒスイ
- ガラス
- 樹脂
金は加工性の良い金属ですが、銅成分の多いピンクゴールドは粘性が弱いため、火を使った溶接ではなく、レーザー光線を用いたスポット溶接を行うことが多いです。△の金属は理論上は溶接可能ですが、混合される物質によって加工できない場合もございます。
デザインによる可否
基本的には、加工可能な金属で宝石が留まっていない指輪であればサイズ直しが可能です。宝石が留まっている場合は、加工時に影響を受けないよう、宝石を外す・覆って保護する・スポット溶接を行うなどの方法を取ります。
指輪の輪面に宝石が留まっているデザインの場合は、サイズを調整する際に、宝石が留まっている箇所を曲げてしまうと宝石が外れたり割れたりしてしまうため、留まっていない範囲の輪部を曲げて調整することになります。
- ○サイズ直しができる主なデザイン
- 金属のみのシンプルなデザインの指輪
- 爪や接着によって宝石が1石留まっている指輪
- △サイズ直しが難しい主なデザイン
- 樹脂素材が使われている指輪
- 輪面に宝石が留まっている指輪
- 宝石を外すことができない銀製の指輪
- ×サイズ直しができない主なデザイン
- 全周に宝石が留まっている指輪
- パーツの組み上げで作られている一部のブランド等の指輪
- 内部が空洞の指輪
ハワイアンジュエリーに多い、金属のみで全周に彫りが入っている指輪はサイズ直し可能ですが、サイズ直しの特性上、彫り模様が一部切れてしまいます 。(一部のハワイアンジュエリー専門店では対処できる場合もあるようです)
宝石を外すことができない銀製の指輪は、銀の熱伝導率が良いため、通常の溶接では宝石を傷めてしまいますが、細いものはスポット溶接で加工可能です。輪面に宝石が留まっている指輪には、指輪のフォルムが楕円形になる場合や加工ができないことがあります。
サイズ直し修理ができない時に取れる手段は?
「完全」なカタチでのサイズ直しができなくても、加工方法を変えたり、市販の指輪サイズの調整グッズを用いることで、お気に入りの指輪を使い続けるられる場合もございますので、合わせてご紹介させて頂きます。
フリーサイズ加工する
指輪の一部を切り離して開いている状態にする方法です。宝石が留まっていてメッキ加工されていない銀や真鍮の指輪などの調整に向いています。溶接加工が必要ない代わりに、一度切ってしまうと元に戻せないというデメリットもあります。
メッキ加工されている指輪は、中の地の色が出てきてしまうので向いておりません。また、指輪の一部が開いているため、着けていると徐々に指輪が広がってきます。中心部が重い指輪の場合は、重い部分が下に向かって動くようになってしまうので避けた方が良いでしょう。
リングアジャスターを取り付ける
サイズダウン目的のみの方法ですが、指輪に加工が施せない場合には、リングサイズアジャスターを取り付ける方法も有効です。画像の様にシリコンを巻き付けるタイプ、内側に貼り付けるタイプなど様々な種類がございます。
amazonや楽天市場などのインターネット通販でも比較的安価で購入できます。「指輪が大きいけれどジュエリーショップから加工できないと言われてしまった」という方は、「リングアジャスター」というキーワードで検索してみて下さい。
まとめ
指輪のサイズ直しの可否について、実際の加工内容から、ショップで断られてしまった際の対応までご紹介させて頂きました。これらの内容は、ジュエリー優の職人が行うサイズ直しの可否基準となっております。
ジュエリーショップによっては、別の加工基準や加工方法でサイズ直しを承っている例もございます。そのため、実際にサイズ直しを依頼される場合は、そのショップの担当者とよくお打ち合わせの上でお修理を進めるようにして下さい。
あなたの「買ったけれどサイズが合わなくて使っていない指輪」や「気に入って着けていたけど、いつの間にか入らなくなってしまった指輪」に再び輝く機会が訪れることを祈っております。