神奈川県の地域情報誌はまかぜ新聞にチーフデザイナー坂東幸香のジュエリーポエム「翼」をご掲載いただきました。
翼
坂東幸香
私は身にそぐわぬ不細工な大きな翼を頂いて生まれました。
その為、上手に飛べず、狩もままならない日々でした。
そんな私にも。春が訪れ、恋を知り、夏が過ぎて母になりました。
一男、一女の二羽の、これまた大きな翼の子供を授かりました。
飛ぶにも、狩をするにも都合の悪い大きな翼は
子供たちを外敵から守り、大きな安らぎとぬくもりを与えました。
子供らと過ごす、時は早送りに日々を進め、
再びの春は巣立ちの春となりました。
明日は飛び立つこの子らに伝えなくてはいけない事があります。
この嘴を持つ私達は、戦いに勝ち、他者の命を自分の生とし生きる者。
自分の命に他者の生が在ることを想い、強く生きろと伝えなければ
スヤスヤと眠る我が子に朝陽がかかる
陽が昇り、光のかけらがキラキラと遊ぶ大海原を眼下に見、
誇らしく翼を広げ飛び立ちましょう。
この祝いのこの時にこの母からのメッセージ風に乗り、飛翔しながら伝えましょう。
そして、それぞれの、明日を精一杯飛び続けましょう。
空を自由に、そして優雅に飛翔する鳥の指輪をお作りになりたいとのご希望に添ってお作りさせて頂いたリングです。重厚感のある独特な白さを持つプラチナを使用しています。
実はこの鳥は実在する鳥ではありません。お客様のご希望からイメージを膨らませ、数種類の野鳥から特徴を抜き出してイメージされている鳥になる様デフォルメしています。
翼は大きく、嘴の形は高貴に、瞳(濃いブルーサファイヤ)は澄んだ優しさを湛えています。
羽の軽やかさと、飛んでいる躍動感を感じて頂ける様に、最終仕上げにもこだわりました。プラチナの硬さが残らない様に、一度完成した後から細く細かいテクスチャーを施し、今、まさに飛んでいる様子を切り取ったように表現しています。
360度どの角度から、ご覧になられても美しさ・気高さ・力強さを感じて頂ける様に、モデリングに修正とチェックを何度も重ね生まれてきた母鳥です。
子供を守りながら育て上げた素敵な母鳥は、その大きな翼で飛び続けることでしょう。最愛の子供たちを想いながら。
「ジュエリー百のお話」は、オリジナルジュエリーの制作の際や、ジュエリーのオーダーメイド・リフォーム時にあわせて創っています。
お話は、不定期のコラムとして神奈川県内のフリーペーパーはまかぜ新聞「はまかぜ金沢版」で、連載させて頂いております。
オーダーメイド・オーダーリフォームをされる際に、「わたしのジュエリーにも詩をつけて欲しい!」というご希望がございましたら遠慮なくおっしゃって下さいね。
ジュエリー優をご利用される方々が、それぞれの想いでジュエリーやアクセサリーを好きになって、笑顔が増えていくことを願いながら日々私達はデザイン・加工・情報発信をしています。