神奈川県の地域情報誌はまかぜ新聞にチーフデザイナー坂東幸香のジュエリーポエム「思川と桜」をご掲載いただきました。
思川と桜
坂東幸香
今 あなたの心に咲きました。
思川桜が咲きました。晴れの日には光をまとい
雨の日には雫に揺れて
雪の日にも凛として
大空のキャンパス背にして咲いています。小さな花びらひとひらは
力を合わせてところどころの八重になり
修道院の庭先に ひとりぼっちで咲きました。
一年 二年経った時
思川のほとりに沢山一緒に咲きました。今 桜が散りました 今 吹いてきた風に散りました。
風は薄桃色の塊となって 思川に桜を乗せました。
川の流れは 時の流れ
小さなひとひらひとひらは
過去から今を未来に向かい 静かに流れて逝きました。悲しみの風に煽られて 心が飛ばされそうになった時
覗いてほしい心の中を 光をまとい 雫に揺れて
凛として咲く あるがままの思川桜
栃木県小山市のとある方からのご依頼を受け、美術館で思川桜モチーフのジュエリーとして、シリーズで展示していただきました。
薄く伸ばした18金のホワイトゴールドとピンクゴールドを溶接して、細かく細かくテクスチャーを施すことでふんわりとした可憐な花びらになっています。
ネックレス部分は、高品質なアコヤ真珠のグレーカラーのベビー珠をカラーグラデーションにして使用しています。
このグレーカラーのベビーパールの間に深緑色のグリーンガーネットで差し色を入れることによって、全体の雰囲気が締まりグッと立体的な表情のネックレスに仕上がっています。
栃木県小山市の思川のほとりにある修道院の庭先に突然変異の新種の桜が生まれ、綺麗な川のイメージに重なるので、思川桜の名前が付いたそうです。
お話を頂いてからモチーフのスケッチを桜の開花時期に合わせて見学に伺ったのですが、その日は5年ぶりの5月の霙の日で、霙の中の桜の花という神秘的な場面に立ち会うことができました。
ピンクの桜は霙の重さで下を向いていましたが、その重さに耐え、首を上げようともしている様子に健気な力強さを感じ、そのままのイメージを形にしています。
小さくても儚くても前を向いて精一杯の美を体現する思川桜に心を打たれました。
「ジュエリー百のお話」は、オリジナルジュエリーの制作の際や、ジュエリーのオーダーメイド・リフォーム時にあわせて創っています。
お話は、不定期のコラムとして神奈川県内のフリーペーパーはまかぜ新聞「はまかぜ金沢版」で、連載させて頂いております。
オーダーメイド・オーダーリフォームをされる際に、「わたしのジュエリーにも詩をつけて欲しい!」というご希望がございましたら遠慮なくおっしゃって下さいね。
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