「ふと気が付いたら愛用していたペンダントの金色が剥げてきてしまった。」「最近着けていなかった指輪が黒ずんでしまっていた。」そんなご経験はありませんか?大切にしていたアイテムであればあるほど「何とか元通りにできないかな?」と思いますよね。
ジュエリーやアクセサリーの変色やメッキ剥げについては、『修理できる可能性が高いもの』『修理できない可能性が高いもの』『修理できないもの』の3つに分けられます。今回はアイテムの再メッキ加工の可否や、その理由について詳しく解説させて頂きます。
ジュエリーやアクセサリーはアイテム毎に表面加工が異なる
メッキ加工は金属の表面に別の材質の薄い膜を作る『表面加工』のうちの一つなのですが、メーカーやアイテム、金属材質によって表面加工の内容が変わります。適切な修理を行うためには『どんな表面加工が施されているか』を知ることが第一歩になります。
次の項目でジュエリーやアクセサリーに施されている代表的な表面加工とアイテム例、主な修理方法をご紹介させて頂きますので、あなたがお持ちの変色を改善したいアイテムがどのジャンルに当てはまりそうかを確認してみて下さい。
ジュエリーやアクセサリーの表面加工の種類とアイテム例
ジュエリーやアクセサリーに施されている表面加工は大きく分けて『ジュエリーメッキ』『アクセサリーメッキ』『塗装』の3つです。これに『表面加工されていない』の計4カテゴリーに分けてご紹介させて頂きます。
※一般的なケースを想定しております。メーカーによって異なるため、必ずしもお持ちのアイテムが下記の通りとは限りません。
[修理できる可能が高い]
A. 表面加工が施されていないアイテム
金属の生地の色味が美しいものや、経年による色の変化を楽しむアイテムについては、金属表面に加工を施さないことが多いです。
アイテム例
- イエローゴールド製品
- 18金、14金、10金など『イエローゴールド』は生地の色味が金色で美しいため、メッキ加工は施されていないことが多いです。
- ピンクゴールド製品
- 18金、14金、10金などの『ピンクゴールド』も生地の色味がはっきりとピンク色のため、メッキ加工を行わないことが多いです。しかし、銅成分が多く黒くなりやすいため、変色を防ぐためにメッキを施すこともあります。
- プラチナ製品
- プラチナは生地の色味が純白で、大気や日常生活で使用される薬品等には影響されにくいため、メッキ加工は施されないことが多いです。長年使用しても色変わりしにくいので、結婚指輪でも人気の素材になっています。
- シルバー製品
- 銀製のインディアンジュエリーや、クロムハーツ等のシルバーアクセサリーは、デザインの一部をいぶしたり、経年による色の変化 (エイジング) を楽しむためにあえて金属表面へ加工を施さないことがあります。
変色を戻す修理方法
表面加工が施されていないジュエリーやアクセサリーが変色してしまった場合は、アイテム全体を磨き直すことで綺麗にしていきます。入り組んでいて磨きが入りにくい面がある場合には、液体の薬品に漬けこんで変色を取る場合もあります。
[修理できる可能が高い]
B. メッキ加工が施されているジュエリー
生地がくすんだ色味のジュエリーはメッキ加工が施されることが多いです。経年によってメッキが剥げ、地の色が目立ってきます。
アイテム例
- ホワイトゴールド製品
- 18金、14金、10金などの『ホワイトゴールド』は生地の色味がアイボリー色のため、表面にロジウムメッキを施すことが多いです。ハワイアンジュエリーではニッケルを生地に混ぜて色を白くし、メッキを施さない工法が取られているケースもあります。
- シルバー製品
- 銀製品は大気や硫黄 (温泉) などの影響によって黒くなりやすいため、ロジウムやニッケルのメッキが施されることがあります。シルバーは文化によるエイジングの捉え方や、デザイナーの意図によりメッキ加工の判断が変わる面白いアイテムです。
変色を戻す修理方法
ジュエリー素材 (ホワイトゴールドやシルバー) に使用されているメッキは、アイテムの表面が荒れていると綺麗に定着しないため、アイテムを磨き直してから施されます。ジュエリーに施されるメッキは主に色味の改善のために行われています。
[修理できない可能が高い]
C. メッキ加工が施されているアクセサリー
木やレジン樹脂などを除く安価な金属製のアクセサリーには、ニッケルやスズ等のメッキが施されているケースが多く見られます。
アイテム例
- 卑金属製品
- 鉄や銅、鉛など製品価格を抑えて気軽に楽しめるように作られたアクセサリーは、生地の色味がグレーや茶色のため、見た目を改善させるためにニッケルやスズメッキが施されます。一部アルミ製品などではメッキしないこともある様です。
変色を戻す修理方法
卑金属素材のアクセサリーは製品の制作コストを抑えるために、本体を磨く作業を省いて表面に銅メッキを施すことで金属面の凹凸を隠し、更にその上からメッキを重ねることで作られているものが多くあります。
つまり、ジュエリー素材と異なり、表面研磨の代わり・色の改善の2つの目的でメッキ加工が施されているため、修理を試みると、地金が割れる・溶ける、メッキがまだら模様になる等の問題が起こってしまうため、基本的には再メッキ加工ができません。
[修理できない]
D. 塗装が施されているアクセサリー
表面の色付けや保護を目的として、一部のブランドやメーカーではアクセサリーに塗料を用いた表面加工を行っています。
アイテム例
- デザイナーズ・ブランドアクセサリー等
- 主にファッションブランドでは、ポップな印象付けのためにアクセサリーにカラフルな塗料を塗ったり、金属質感を変えるために製品を塗料に漬け込んで作られているアイテムが見られます。シャネルのマーク箇所に塗装が使われていることもあります。
変色を戻す修理方法
塗装はメッキ加工と異なり、金属の表面に樹脂が付着している状態ですので、洗浄でも剥がれてしまうことがあります。塗装されたアイテムは再塗装や金属面の磨きは行うことができませんので、磨いたり洗ったりしない様に注意して下さい。
ジュエリーのメッキ加工
実際にどんなかたちでメッキ加工が行われているか気になる方もいらっしゃると思いますので、メッキ加工の機械や工程についてもご紹介させて頂きます。こちらは上記の「B」に当てはまるアイテムに施すジュエリー用メッキ加工の流れです。
1. 磨く
表面に小キズが残っている状態ですと、メッキが綺麗に付かない、面が曇ってしまうといったことが起きてしまいます。こうしたことを避けるために、メッキ加工を施す前にはしっかりとアイテムの表面を磨いて仕上げていきます。
2. 脱脂する
アイテムを磨いた後に洗浄を行ったら、脱脂の工程に移ります。メッキ加工は電気を通して金属面に別の金属の膜を作る加工です。アイテムの面に油分が付着しているとメッキが付かないため、脱脂溶液の入ったビーカー (①) に浸けて電気を流し油分を落とします。
3. メッキを施す
脱脂後に一度ぬるま湯で濯いだらメッキ液 (②) の中に40秒程度浸します。綺麗にメッキが付いていることを確認してから再度ぬるま湯で洗い、乾くのを待ってメッキ加工完了です。メッキ加工は下の画像の器具にアイテムを引っ掛けて行います。
まとめ
金製や銀製のアイテムは、変色やメッキが剥がれてしまった際に修理可能な場合が多いです。対して、メッキ合金製の場合は、くすんでしまうと修理できないケースが多いため、長く使いたいアイテムは、購入時の費用はかかりますが、金製や銀製がオススメです。
とはいえ、デザインや好みのブランドによっては、メッキ合金製のアイテムしか販売されていないケースも多々あります。そのため、特にメッキ合金製のアイテムは、変色やメッキ剥がれが起きてしまわない様、定期的にメンテナンスしてあげましょう。
メッキ合金製のアイテムは、使用後に眼鏡拭き等の毛の短い柔らかな布で軽く拭き、長い間使わない場合も時々拭いてあげると良いです。研磨剤の入っているシルバー磨き布等は、拭いてしまうとメッキが剥げてしまうので絶対に使用しないで下さい。
金製や銀製のアイテムの変色を戻したい時はお修理承りますのでご相談下さい (アイテムによってはメッキ加工を行うことができないケースもございます)。また、金色に飽きたらメッキ加工を施してプラチナ色にイメージチェンジするというのも面白いですよ。
参考: 「プチリフォームはジュエリーやアクセサリーを再び輝かせる」
というわけで、今回はジュエリーやアクセサリーに施されている表面加工についてご紹介させて頂きました。こちらの記事を、あなたがお気に入りのジュエリーやアクセサリーを長く楽しむヒントに活用していただけたら嬉しいです。