新型コロナウイルス感染症が流行して以来、今やどこに行っても消毒液が入口に置かれています。手を除菌してから入館・入店するといったことがエチケットになり、私達も特に違和感を感じることなく「シュッ」とワンプッシュすることが習慣となりましたね。
自然の流れで除菌しているので、なかなか意識することは少ないですが「そういえば、指輪着けてきたけど宝石に影響無いかしら?」と心配に思う事ありませんか?実は、ジュエリーの中にはアルコールの影響を受けやすい宝石もあります。
ということで、今回は除菌アルコールによって影響を受けやすい宝石や、ジュエリー・アクセサリーについてご紹介していくと共に、指輪を着けて外出される際の事前対策や、アルコールが付着してしまった時の対応方法についてもご案内させて頂きます。
手指の除菌アルコールの成分
宝石について細かく見ていく前に、先ず手指の除菌用アルコールの成分について確認しておきましょう。除菌アルコールの主成分はエタノールです。その他に精製水やアルコールの揮発による乾燥から手指を守るためのグリセリンなどの保湿剤が含まれています。
エタノールの濃度は76.9%~81.4%が最も殺菌作用が高いとされているため、置かれているアルコール消毒液はこの基準に準拠したものが多いと思われます。つまり、手指の消毒剤はアルコール濃度が高いため、宝石によっては影響を受ける可能性があると言えます。
除菌アルコールが宝石やジュエリーに及ぼす影響
現在では多種多様な素材を使用してアクセサリーやジュエリーが作られているため、今回は有機物 (動物や植物由来) の宝石・無機物 (鉱物由来) の宝石・人工物・貴金属の4つのカテゴリーに分けてアルコール消毒液から受けうる影響をご紹介します。
有機物 (動物や植物由来) の宝石
有機物由来の宝石は、基本的に宝石内部に水分を含んでいることが多く、エタノールの揮発性によって水分が飛んでしまうことで、宝石表面の剥がれや割れ、光沢の減退が起きてしまうことがあります。また、染色加工されている宝石は退色や変色の恐れもあります。
特にサンゴは影響を受ける可能性が高いため注意して下さい。真珠は加工上、珠を外す際にアルコールを使用することもあるため、比較的に影響を受けにくいとは思われますが、淡水真珠の場合は染色されていることが多いため、変色の原因になる可能性があります。
- 特に注意が必要な有機物由来の代表的な宝石
- サンゴ
- 本真珠 (アコヤ真珠・南洋真珠・淡水真珠など)
- オパール
- コハク
- べっ甲
- 象牙
無機物 (鉱物由来) の宝石
ダイヤモンドなどの鉱物由来の宝石はアルコールの影響を受けないものが多いのですが、天然の状態でキズが多いため、樹脂などを充填することが多いエメラルドは注意が必要です。また、多孔質と呼ばれる軽石状の組織を持つ宝石はアルコールで傷んでしまいます。
具体的にはターコイズ (トルコ石) やラピスラズリ、マラカイトがこれに当たります。また、これらの宝石は宝石表面にニス加工されていたり染色されていることもあるため、消毒液の影響で輝きの減退や退色してしまう可能性もあります。
- 特に注意が必要な無機物由来の代表的な宝石
- エメラルド
- ターコイズ
- ラピスラズリ
- マラカイト
人工物
人工パールやレジンで制作された作品・ゴムブレスレットの芯材ゴムなどが人工物にあたります。人工パールは塗装が多いためアルコールは色剥げの原因になります。レジン樹脂はアルコールの影響によって割れてしまうことがあります。
シリコンゴムについても同様の理由で切れやすくなります。スワロフスキーなど、ガラス製品については基本的にはアルコールの影響は受けにくいと思われますが、塗装が施されている作品の場合には色剥げが起きてしまう可能性があります。
貴金属
プラチナ・金・銀といった貴金属は基本的には除菌アルコールの影響は受けません。そのため、宝石の留まっていない結婚指輪やダイヤモンドの婚約指輪は比較的に安全と言えます。また、メッキ加工の施された合金についても影響は受けにくいでしょう。
しかし、シャネルやディーゼル、ポールスミスなど、服飾ブランドから発信されているアクセサリーでは塗装を施したアイテムが多く見受けられます。塗装箇所にアルコールがかかってしまうと退色や変色の原因となりますので注意が必要です。
除菌アルコールが付かないための対策と付着してしまった際の対処
除菌アルコールが付着してしまったことに気が付いた時は眼鏡拭きなどの柔らかい布で優しく拭き取りましょう。眼鏡を使われていない方も常に眼鏡拭き布をバッグに一枚入れておくと、いざという時に役立つのでオススメです。
しかし、ターコイズなどの多孔質の宝石はアルコールの影響を受けやすく水にも弱いためアルコールが付かないようにする必要があります。また、塗装の施されているアクセサリーについてもアルコールが付いた時点で剥げてしまうことがあります。
そのため、ジュエリーやアクセサリーを身に着けて外出される際には、
- アルコール除菌の影響を受けにくい宝石を身に着ける
- アルコール除菌の度にジュエリーやアクセサリーを外す
- プッシュ式の除菌スプレーは勢いよく押さない
- 除菌ジェルがジュエリーに残らないように柔らかい布で拭きとる
といった注意と工夫が必要です。アルコールに弱い宝石は他の洗浄方法にも弱いものが多い傾向にあるため、水やお湯での丸洗いなどは基本的には行わず、購入店に相談してから対処して下さい。
まとめ
あまり神経質になり過ぎる必要はありませんが、手指の除菌アルコールを使用する際は指輪を着けているということを意識して、優しくプッシュして下さい。特にジェルタイプの除菌アルコールは付着してから長時間残りやすいのでご注意を。
優しくプッシュしてあげれば、除菌液が飛び散ってしまうことも避けられるので、指輪以外のネックレスやピアスなどのジュエリーやアクセサリーは普段通りに着けていてもトラブルを起こしてしまう心配は少ないと思われます。
手指の除菌を考慮すると、少しだけ指輪を着けて出かけることが心配になったり、面倒になってしまうかもしれませんが、こんな時だからこそ、あなた自身を楽しませてあげられるようにコーディネートして外出されてみてはどうでしょうか?
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